組織移植について

心臓弁・血管移植とは

東大病院・組織バンクは、心臓弁・血管を扱っています。

心臓弁移植の主な適応
疾患名 術式
感染性心内膜炎 大動脈基部置換術
人工弁感染
大動脈弁輪部膿瘍
人工弁縫合不全を生じた大動脈弁炎症候群
先天性心疾患(左心低形成症候群、大動脈狭窄など)の一部 Norwood手術
Ross手術

 

感染性心内膜炎

 感染性心内膜炎は同種心臓弁移植を受ける患者さんに最も多い病気の1つです。

 

 組織生存性のある同種組織移植の最大の特徴は、感染に強いと言うことです。なかでも、感染性心内膜炎は心臓弁に好発し、弁輪から心筋内まで膿瘍が及ぶことがあり、抗生剤でも効果がないことが多く、きわめて重篤な疾患です。しかも、通常の人工弁で置換するとその人工弁までも感染におかされることが多く、同種大動脈弁移植は救命のための治療法です。

 

 心臓弁の病気で入院された患者様全員に、心臓弁の組織移植をするわけではありません。多くの場合、人工弁を移植します。それで回復する場合もありますが、人工弁は感染症を起こしやすいため、なかには術後感染症を合併し、人工弁が機能しなくなってしまい、何度も人工弁を移植しなおさなくてはならなくなることもあります。

 そんな患者様のために、最後の手段として、同種組織弁は移植されます。人工弁と比べて、同種組織弁は非常に感染症に対して抵抗性が強いため、同種組織弁を移植された方の多くが回復しています。

 

小児への移植

 抗凝固療法を必要としない抗血栓性、良好な血行動態などから、小児の先天性心疾患(左心低形成症候群など)に適応されています。
 しかし、術後早期の弁石灰化、弁機能不全が起こることが知られており、これには免疫反応、あるいは活発な組織の代謝が関与していることが示唆されています。このため、小児への同種大動脈弁移植では、再手術も考慮しておかなければなりません。

 

血管移植の主な適応

大動脈の移植

 同種心臓弁同様、同種血管は感染に強いという特徴があるため、人工血管移植で治癒し得なかった疾患(人工血管感染、仮性大動脈瘤など)や、感染性大動脈瘤に対する大動脈置換術に適応されています。

  

静脈系の移植

 当組織バンクから移植される静脈移植術のうち、9割以上を占めているのが、生体部分肝移植における肝静脈・門脈再建です。東大病院移植外科では、生体部分肝移植が盛んに行なわれており、ドナーから摘出した肝臓の肝静脈を再建するために同種血管を利用しています。静脈グラフトを移植しない場合に比べ、レシピエント本人への侵襲も少なく、静脈の開存率も良いと報告されています。しかし、静脈グラフトの需要増加に相反し、心停止ドナーの不足により静脈グラフトも不足しているのが現状です。